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インド太平洋と中東を結ぶ日本の重要性

友好関係から同盟まで、アジア国家のグローバルな影響力が拡大している


2024年、中東の持続可能な平和を築く国として、取り立てて日本を思い浮かべることはないかもしれない。 しかし新年を迎えた今、日本はインド太平洋と中東を結び多くの人々に利益をもたらす重要な機会を秘めている。


日本はインド太平洋の技術大国、そして世界第三位の経済大国である。また中東のエネルギー輸出国とは重要な関係性があり、イスラエルへの技術投資も拡大しているにも関わらず、日本はこれまで中東地域での戦略的な議論に参加したり、仲介する大きな役割を果たしたことがない。しかし、2024年はこれまでと異なる可能性がある。中東は現在の紛争からの出口を探しており、アメリカ、台湾、韓国、日本など、いくつかの国で選挙が控えているためである。

POOL / VIA REUTERS


何十年もの間、日米同盟はアメリカの戦略における重要な要素であり、両国とインド太平洋地域に明確で持続的な利益をもたらしてきた。しかしこの力関係は、安倍晋三政権下で根本的に変化し始めた。日本は初めてリーダーシップの役割を担い、デジタル時代の貿易のため、自由で開かれたインド太平洋地域を推進、2023年は主要7か国(G7)議長国としてさらに重要な役割を果たした。 日米パートナーシップは、この流れを継続させる準備が十二分に整っている。日本がさらに大きな役割を果たし、何千年もの間、インド太平洋と深くつながってきた地域、中東にまでこの同盟の背後にある基本原則を拡大することで世界は恩恵を受けるだろう。ロシアと中国は、それぞれの影響力を拡大するため独自の戦略推進の動きを強めており、この地域で自分たちの価値観を広めようとしている。そして、その価値観は我々が共有する自由民主主義とは異なるものである。


日本独自の資産


日本には、中東の安定化に大いに貢献しうる資産が4つある。それは、歴史、友好関係、同盟、そして価値観である。日本は変革の成功事例であり、20世紀にテクノロジーを経済発展のエンジンとして活用した最初の非西洋国である。日本はパートナーとして見られており、エルサレムからテヘラン、ラマラ、リヤド、アンカラまで、中東のすべての首都と強力で長期にわたる友好関係を持つ唯一の国である。日本はアメリカの同盟国としてインド太平洋地域における最も重要な結びつきでもある。また、オープンな社会の民主主義の価値観を大切にしつつ、グローバルサウスとの包摂と公平の原則を促進する、より共同体的な競争形態を持つ独自の資本主義観を有している。 過去10年間で、日本とイスラエルの関係は経済、政治、社会の領域で大きく深まった。その変化の多くは、日本が初期段階のイノベーションを求めていることに起因している。ワシントンと北京の関係が複雑な局面を迎えている中、イスラエルはアジアにおけるパートナーのネットワークを広げようとしており、そのリストのトップには日本がいる。


イスラエルと日本は、開かれた自由な社会の価値、個人の自由と志向を尊重するという未来の展望を共有している。同時に、進歩するテクノロジーを戦略的なもの、つまり共通の目的を達成するための中核的で重要な手段として捉えている。日本は、アラブのエネルギーパートナーからの新しいメッセージ「イスラエルとの協力の時が来た」という流れにも影響を受けている。これらを考慮すると、アブラハム合意の時代において、日本がイスラエルのベンチャー企業への投資を増やすことは非常に理にかなっている。 日本はペルシャ湾周辺の関係構築にも力を入れている。岸田文雄首相は7月にサウジアラビア、UAE、カタールを歴訪した際、エネルギー協力に関する複数の協定に署名した。これらの取り決めは、ウクライナ戦争を踏まえた追加のエネルギー供給確保を意図したものでもあるが、湾岸諸国が将来的に化石燃料輸出の貿易に占める割合を減らしていくことを促進するという点にも重点を置いている。


湾岸諸国の経済が今後数十年にわたって成長するためには、技術への投資が重要であり、日本はますます理想的な協力者と見なされている。さらに日本とのパートナーシップは、これらの国々が米国市場でのアクセスやリターンが減少するリスクを有さない。 日本は10月7日のイスラエルへの恐ろしいテロ攻撃を非難すると同時に、パレスチナとの緊密な関係の維持にも注意を払ってきた。日本はテロに対して中立とはみなされていないが、戦争が続くなか双方との関係にバランスを保とうとしているという印象を持たれている。この方針は、多くの日本国民の間で長年共有されている、日本がイスラエルかパレスチナのどちらか側に立っていると見られたくない、という姿勢を反映している。安倍晋三元首相はドナルド・トランプ大統領(当時)に、イスラエルとパレスチナ間の和平交渉を日本が主催することを提案したこともある。


アジアの転換


現在の紛争が終結すれば、日本、湾岸諸国、米国、インド、韓国、シンガポール、台湾、イスラエルは、インド太平洋・中東技術同盟(IPMETA)の中核を形成することができる。テクノロジー以上に、中東の永続的な平和や復興、成長に貢献しうる可能性を秘めたものはない。 日本の官民セクターは、過去半世紀にわたり、インド太平洋地域における教育への投資、経済機会、研究開発、技術革新をめぐる公平性の向上において重要な役割を果たしてきた。IPMETAは包括的なものであり、パレスチナ人を含む地域全体の投資、起業、成長へのアクセスを促進する。テクノロジーと国家、そして人々の運命を好転させるその可能性は、世界で最も多様でダイナミックなこの2つの地域を結びつける接着剤である。


中東ではアジア・ピボット(転換)が起きている。今回の紛争に先立ち、他の国々は米国の中東撤退とも受け取れる空白を積極的に埋めようとしていた。中国がリヤドとテヘランの正常化を仲介したのはその有力な一例である。北京とモスクワ、そしていまやテヘランがますます接近するなか、日本は厳しい現実に直面している。もはや民主的な経済大国、技術大国としての地位に見合った役割を果たさないわけにはいかない。 日本がその未来を切り開こうと果敢に努力せず手をこまねくことは、1世紀近くにわたって前例のない繁栄と成長を支えてきた重要な価値観から日本そのものを疎外するリスクを孕んでいる。これは積極的な姿勢を取るリスクをはるかに上回る。日本は中東における新たなポスト・カーボン経済の理想的なアンカー、またパートナーであり、両地域をつなぐ重要な存在である。これ以上の賭けはない。



ツビ・ハウザー:イスラエル・クネセト元副議長、イスラエル・日本議員友好グループ元会長

ジョシュア・W・ウォーカー:日本協会 会長兼CEO

アンドリュー・M・サイデル:ダイナミック・ストラテジーズ・アジア会長兼CEO


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